2010年02月19日

エサ=ペッカ・サロネンに聞く (2) [フィルハーモニア管弦楽団]

(⇒インタビュー第1回目はこちら
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Q:ロンドンといえば、プログラムの一部である《へリックス》についてもお尋ねしたかったのですが、《へリックス》はL.A.にいらっしゃった頃に作曲されたのですか。

サロネン:そうです。フィンランドで作曲しましたが、《へリックス》は、私がまだロサンゼルス・フィルハーモニックにいたときの作品です。

Q:この作品のインスピレーションについて、お聞かせください。
サロネン:
この作品は、ワールド・オーケストラ・フォー・ピース(World Orchestra for Peace)に委嘱された作品です。実は、私の同僚であり、友人でもあるワレリー・ゲルギエフが、同オーケストラのために作曲することを提案してくれたのです。

Q:そして、ゲルギエフ氏が初演したのですよね。
サロネン:そうです、彼がロンドンのプロムスでオーケストラと初演しました。コンサートのテーマは、第二次世界大戦終戦60周年記念でした。しかし私は、短いオーケストラ作品に対して、テーマがあまりにも巨大なので、そのテーマについての曲を作曲しようと思わないことにしました。ワレリーには、コンサート・ピースを書くと伝えたのです。

Q:なるほど。この曲を完成されるまでに、どれくらいの時間を費やされたのですか。
サロネン:断続的に作曲しましたから、はっきり覚えていないのですが、全部あわせると2〜3ヶ月くらいになると思います。2年間くらいかけて、断続的に作曲しました。

Q:今では、もっと作曲に費やすためのお時間があるのでしょうか?
サロネン:まだ、2年前、3年前に受けた仕事があるのです(笑)。指揮の活動は、1年の半分くらいに絞るのが、私の目標です。
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Q:お忙しいですね。
サロネン:
ええ、今はとても忙しいですね。来年は、少し指揮の活動が減る予定です。

Q:さて、日本では《へリックス》と、チャイコフスキー作曲「ヴァイオリン協奏曲」、シベリウス作曲「交響曲第二番」からなるコンサートを指揮されますが、このプログラミングの意図をお聞かせいただけますか?
サロネン:
どれも、北東ヨーロッパの音楽ということが言えますね。チャイコフスキーはロシアの作曲家で、私とシベリウスはヘルシンキ、近所ですよね。そのようなわけで、プログラムにはある種の地域性がありますが、それ以外には特にテーマはない・・・ですね。

Q:ヒラリー・ハーンさんと共演されたことは、おありですか。
サロネン:
コンサートで何度か共演していますし、シベリウスとシェーンベルクの「ヴァイオリン協奏曲」を録音しています。
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Q:彼女のことをどう思われますか。
サロネン:
彼女は素晴らしい演奏家です。真の意味で、我々の時代の最も優れたアーティストの一人です。そして、妥協を知らない、完全なる“完璧主義者”ですね。私は彼女の完璧主義を心から尊敬しています。

Q:それでは、再びフィルハーモニアのお話を伺いたいと思います。現在はフィルハーモニア管がホームベースということになるかと思うのですが、フィルハーモニア管とのご経験をお聞かせください。
サロネン:
素晴らしいです!彼らは実に、素晴らしいオーケストラで 、素晴らしい伝統があると同時に、非常にオープンなオーケストラだと感じています。とても美しいサウンドを奏でてくれるのです。

Q:さきほどおっしゃったオープンである、ということは、どういうことですか?
サロネン:
スタイルとレパートリーについてです。とても柔軟性があり、プロフェッショナルなグループです。彼らとは、長く仕事をしていますので、首席指揮者に就任したことは、もちろん嬉しいことではありましたが、もうかれこれ20年以上も一緒に“音楽する”関係を築いてきていますので、劇的な変化ではありませんでした。お互いのことを十分に理解し、これから発展もしていけるという関係だと感じています。

インタビュアー:小林伸太郎(音楽ジャーナリスト/在ニューヨーク)

次回も、マエストロの日本ツアーへの思い、そして今後の計画などについて伺います。


≪来日公演情報!≫
5月31日(月) 19時開演 サントリーホール
6月2日(水) 19時開演 サントリーホール
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公演の詳細情報はこちらから
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2010年02月16日

アンスネス&ノルウェー室内管弦楽団 連載(4)「アンスネスのインタビュー後編」

〜ノルウェー室内管弦楽団との来日は長年の夢だった
取材・文 青澤隆明

 アーノンクールが指揮するウィーン・フィルとの共演は、アンスネスにとって大きな音楽経験に違いない。なによりオーストリアの偉大な伝統が息づいている、と彼も語ったが、それに先立ってモーツァルトは友人のような存在である。彼の協奏曲に関して言えば、室内オーケストラと共演するほうがずっと演奏しやすい、とアンスネスは率直に打ち明けた。
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 「モーツァルトのピアノ・コンチェルトは、まず木管楽器の役割が独特で、きわめて室内楽的な音楽づくりが求められる。室内オーケストラではたいてい指揮者なしで演奏するから、すべての演奏家が直接に対話し合うことから多くを得られる。コミュニケーションがとても大切で、それこそ演劇的な音楽だと僕は思っている」。
 この3月に初来日するメルウェー室内管弦楽団との共演でも、アンスネスはモーツァルトに集中する。指揮者を置かず、演奏家個々の自発性を重視するこのチェンバー・オーケストラに、アンスネスは"首席客演ディレクター"の肩書きで関わっている。ピアノ協奏曲のレパートリーに関して、アンサンブル・リーダーとして弾き振りをしながら、緊密なコラボレーションを重ねてきた。
 「ノルウェー室内管弦楽団との来日は、僕の長年の夢だった。このオーケストラとの共演を始めてから、長年ずっと願っていた。日本に行くのは大好きだし、日本の聴衆は素晴らしい。そして、僕はこのオーケストラを愛している。だから、とても幸せに思うよ。みなさんが、このオーケストラを楽しんでくれると、ほんとうにうれしい。素晴らしく柔軟な、生き生きとしたオーケストラだからね。みんな長年の友人たちだし、たくさんツアーも経験したので、大きな信頼関係を抱いている。そして、なによりこのオーケストラには自由がある。フルタイムのオーケストラではないから、こうして集まって演奏するときは、いつもフレッシュな感覚が得られるし、ひとつひとつのコンサートがほんとうに特別なものになる。リハーサルにもたくさん時間をかけるので、さまざまなことを試しながら演奏を練り上げていける」。
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 ツアーのメイン・プログラムは、モーツァルトのイ長調協奏曲第23番K488、ハ短調第24番K491、その間にモーツァルトのニ長調交響曲K.385「ハフナー」、グリーグの「ホルベルク組曲」が演奏される。ピアノ協奏曲の傑作が2曲並ぶのは大きな魅力だ。
「第23番と第24番の2つのコンチェルトを演奏できるのはとても幸せだな。短い期間に作曲されているのに、まったく異なる作品だから、この組み合わせは興味深いと思う。第23番は、モーツァルトにとっても特別なピアノ協奏曲で、イ長調の調性はおそらく天国的ななにかを表現し、慰めをもたらすものだったと思える。終楽章は暗めで、天国的な要素は控えめかもしれないけれど、それでも響きは慈愛に充ちている。ハ短調は真にドラマティックな協奏曲だ。終楽章は、モーツアルトの書いたもっともすぐれた変奏曲だと思う。いっぽう第2楽章を比べると、第23番は非常に暗いが、24番はほとんどラヴ・ソングのようだ。ピュアな幸福感に溢れていて、とても愛おしい・・・・」。
今回のプログラムでは、ピアノ協奏曲ではアンスネスが、それ以外では今シーズンから新たに音楽監督として加わったイザベル・ファン・クーレンがリーダーを務めるというから、オーケストラの表現の柔軟性とともに、そのコントラストも楽しめるだろう。
「そのほかはイザベル・ファン・クーレンの選曲で、僕は演奏しないのでわからないけれど(笑い)、「ハフナー」は祝祭的な作品だから、モーツァルトのまた大きく異なる一面をお聴きいただけると思う。グリーグにとっても、モーツァルトは絶対的な敬愛を寄せる作曲家だった。ホルベルク組曲は様式的にも、バロックと古典派のもつ純粋さをもっていて、そこがモーツァルトにも通じる。オーケストラは大きな自信をもって演奏すると思うよ」。


≪公演情報≫
『アンスネス&ノルウェー室内管弦楽団』
2010年3月21日(日) 14時開演 東京オペラシティ コンサートホール
曲目:
モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番
モーツァルト:交響曲第35番「ハフナー」
グリーグ:ホルベルグ組曲 (ホルベアの時代より)
モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番 ハ短調 K.491
詳しい公演情報はこちらから
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ユーリー・バシュメット、カルチュラル・オリンピアードに登場![国立ノーヴァヤ・ロシア交響楽団]

オリンピック開催都市で大会を盛り上げるために「カルチュラル・オリンピアード」と呼ばれる文化プログラムがあり、その一環で2014年冬季オリンピック開催地のロシアからもウリヤーナ・ロパートキナとユーリー・バシュメットとが出演しました!。

昨年マリインスキー・バレエの舞台がまだ頭から離れないウリヤーナ・ロパートキナ、そして今年芸術監督・首席指揮を務める「国立ノーヴァヤ・ロシア交響楽団」を率いユーリー・バシュメットが5月に来日します!
オリンピック公式サイト


【ユーリー・バシュメット指揮 国立ノーヴァヤ・ロシア交響楽団】
novayaflyer.jpg2010年5月14日(金) 19時開演 東京オペラシティ コンサートホール
芸術監督・首席指揮:ユーリー・バシュメット Yury Bashmet
ピアノ:上原 彩子

≪プログラム≫
チャイコフスキー:幻想序曲「ロミオとジュリエット」
チャイコスキー:ピアノ協奏曲 第1番 (ピアノ:上原 彩子)
チャイコフスキー:交響曲第5番

≪チケット購入≫
【WEB】 WEBジャパン・アーツぴあ
【TEL】 ジャパン・アーツぴあコールセンター (03)5237-7711
詳しい公演情報はこちらから
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2010年02月12日

アンスネス&ノルウェー室内管弦楽団 連載(3)「アンスネスのインタビュー」

アーノンクール指揮ウィーン・フィルとのザルツブルク公演を成功裡に終え、3月のノルウェー室内管との来日公演がますます楽しみになってきました。
現地取材をした青澤隆明さんによるインタビューの中で、日本で演奏予定でもあり、ザルツブルクでも喝采されたモーツァルトのピアノ協奏曲23番を含め、アンスネスがモーツァルトの音楽について語ってくれました。

モーツァルトの誕生日をまえに、アンスネスがザルツブルクで語ったこと
〜アーノンクールとモーツァルト
 「モーツァルはどこにいるかって? ここはザルツブルクだから、いたるところにいるような気がする。このカフェはザルツブルクでいちばん古いから、もしかしたらモーツァルトがそこの席に座って、なにか書いていたかも知れないよ」。
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 1705年創立のカフェ・トマセッリの席に着いて、レイフ・オヴェ・アンスネスが愉快そうに言う。明日は2010年1月27日、モーツァルトの254歳の誕生日だ。ザルツブルクのモーツァルト週間も半ば、アンスネスは祝祭大劇場で、アーノンクール指揮ウィーン・フィルとのピアノ協奏曲イ長調K.488の共演を明晩に控えていた。
「バッハとモーツァルトはいつもそこにいて、僕にとっては友人みたいな存在だ。モーツァルトはとても人間的で、感情も豊かなのに、深い悲しみを表現しても、決して自己憐憫に陥ることはない。とても高いところにいる」。
 アーノンクール、そしてウィーン・フィルとの共演は、アンスネスにとって2006年についで2度目となる。前回も舞台はこのザルツブルクで、モーツァルトの変ホ長調K449とハイドンのト長調の協奏曲を演奏した。
「最初の共演のときは、アーノンクールからいたるところに指示を書きこんだスコアが送られてきた。コンサートの五ヶ月も前にだよ! 彼もいろいろとディスカッションしたかったのだと思うな。アーノンクールは驚くべき想像力の持ち主で、つきせぬアイディアに溢れている。オペラなどの舞台作品も多く手がけていて、ピアノ協奏曲とも多くの関連を見出している。シアトリカルなアプローチをとるなかに、つねに驚きの要素をもつことを求めるから、アーノンクールとの共演はじつに新鮮だ。とにかく学ぶべきことは多いよ。アーノンクールから影響を受けられることを幸せに思う。そして、僕は自分の道を見出そうとしている、ナチュラルに感じられる音楽をすることを。そのうえで、驚きに充ち、論理的に筋の通った演奏をすることは可能なはずだからね」。
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 では、モーツァルトを演奏するときに、アンスネスは作曲家の存在をどのあたりに感じているのだろう?
「いいかい? モーツァルトはいつも人々と繋がっていた作曲家だ。彼の音楽は人々に、そしてみんなの話すことに繋がっている。それが、モーツァルトを偉大なオペラ作曲家にしている。まさに劇場のようにね。ピアノ協奏曲の多くでも、ピアノ独奏の素晴らしさだけでなく、木管楽器をはじめ各パートとの対話なども生き生きとして、オペラ的な世界が展開する。すぐれたピアニストだったモーツァルトにとっても、ピアノを中心とするこの世界はとてもナチュラルなものだったと思う。まさにハイライトといっていい。モーツァルトは社会的で、人間に関心があり、高いところにいるけれど、人生を愛している。カフェやギャンブルや女性に興味をもっていたように。 だから、僕はモーツァルトを舞台上
でも人間として感じている。そして他の演奏家との対話を心から楽しんでいるよ」。

取材・文・写真 青澤隆明
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2010年02月10日

『最強の組合せ』首席指揮者エサ=ペッカ・サロネンとフィルハーモニア管弦楽団 連載第1回目

今年5月、首席指揮者エサ=ペッカ・サロネンとフィルハーモニア管弦楽団が、この組み合わせでは初めての来日を果たします。
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“最強の組合せ”との呼び声高く、「今年一番の注目コンサート」として今から楽しみにしてくださっているお客様も多いのではないでしょうか?

ところで、サロネンがフィルハーモニア管弦楽団の首席指揮者に就任したのは2008年9月ですが、25歳(1983年)の時に急遽代役としてデビューし、その時からサロネンとオーケストラとは強い絆で結ばれてきました。


エサ=ペッカ・サロネンに聞く (1) (3回連載)

今年5月にフィルハーモニー管弦楽団を率いて来日するエサ=ペッカ・サロネンに
ニューヨーク在住のジャーナリスト小林伸太郎さんがロング・インタビュー!
連載3回でお送りします。
作曲家としても活躍中のマエストロならではのコメントに、ますます来日が楽しみになります。

Q:今日はお時間をいただきまして、ありがとうございます。最初に、メトロポリタン・オペラでの素晴らしいヤナーチェク「死者の家から」のご成功、おめでとうございます。
エサ=ペッカ・サロネン(以下、サロネン):ありがとうございます。

Q:そして、これからニューヨーク・フィルハーモニックで演奏されるのですね。確かこの土曜日は、フィルハーモニックとMET、両方で演奏されるのではなかったですか。
サロネン:
そうです。“運の悪い”日、ですね(笑)。

Q:今日は、フィルハーモニア・オーケストラの日本公演に関してお伺いしたいと思います。
今回のツアーのプログラムですが、「はげ山の一夜」は、原典版(オリジナル・バージョン)を演奏されると聞いています。
サロネン:はい、リムスキー=コルサコフ版ではありません。

Q:その理由をお聞かせください。
サロネン:
私は原典版が好きなのです。リムスキー=コルサコフ版とはまったく違った感情を抱きます。ワイルドで、クレージーで、そして切迫感があります。そして、曲の終わり方もとても違う。リムスキー=コルサコフ版では、夜明けに邪悪な霊(スピリット)は教会の鐘の音によって退けられ、いわゆるハッピー・エンドになります。
しかしムソルグスキー版では、邪悪な霊のパーティーは(パチンと指を鳴らして)こんな感じで終わってしまう。ハッピー・エンドはありません。容赦のない終結であるからこそ、魅力的な曲なのだと思います。

Q:ムソルグスキーのことを、ご自身作曲家として、どのようにお考えですか。
サロネン:
私はムソルグスキーをとても崇拝しています。問題は、彼のオーケストラ作品がそれほど多くないので、あまり演奏できる作品がないということですね。もちろんオペラがあって、序曲がありますが・・・基本的に残りは編曲作品です。ですから指揮者にとって演奏できる曲はあまり多くないのですが、音楽言語として、非常にパワフルだと感じます。彼は、時代の遥か先を行っていた人でした。ハーモニーの面でも、遥か時代の先を行っていた。そして、音楽史における、いわゆる生来の天才の一人でした。
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Q:同じコンサートで、たしかバルトークの「中国の不思議な役人」と、ベルリオーズの「幻想交響曲」も演奏されるのでしたよね。これらの曲を一晩で演奏される意図について、お話いただけますか。
サロネン:
どちらもストーリーを語る交響曲であり、ある種、荒々しい幻想的なストーリーです。どちらもリアリズムではなくて、人間の経験の極限の時における、感情の極限を扱っています。また、これらの曲はとてもカラフルな曲であり、非常に強いイメージを喚起する曲です。

Q:どちらもオーケストレーションに新たな世界を開いたということがいえるかとも思うのですが、そういったことも、プログラム作成に関係がありますか?
サロネン:それほどではありません。「幻想交響曲」は音楽史上大変ショッキングな作品だったと思います。当時の観客は、このような曲に全く準備が出来ていなかったはずですから。そして、色々な意味で、前例のない作曲(コンポジション)でした。スケールからも、サウンドからも、その莫大なヴォリュームからもです。おそらく、誰もが聞いたことのない、人間によって作られた最も大きい“ノイズ”だったはずです。この曲が演奏されたときは、観客にとって全くの衝撃だったでしょう。今はヘビーメタルがありますし(笑)、ハードロックもありますし、人々は“ノイズ”に慣れていて、“ノイズ”に溢れた都会も、方々にありますからなんでもありませんが。しかし当時は、人々が聞いたことのある最も大きな“ノイズ”は教会の鐘であったと思います。教会の鐘が、最大の“ノイズ”だったのです。ベルリオーズは、特にフィナーレでそれを超えたわけです。音量だけの話ではなく。。。
20世紀初期の、バルトークが生きていた時代も、新たな発明、過激さに満ちています。私は最初の真の革命は、「春の祭典」だったと思います。同じように「中国の不思議な役人」の初演も大失敗だったわけですが、この曲のある種ユニークで桁外れなところは、街の騒音で始まるところではないでしょうか。とても忙しい都会の、街の“ノイズ”です。組織的な混沌。そういう意味で、これはとても新しいアイディアだったと思います。もちろん、この作品のストーリーはとても異様で、際どいものですから、大変なスキャンダルだったことは想像に難くないでしょう。

Q:なるほど。街の“ノイズ”とおっしゃたことが、とても興味深く思われました。マエストロはロサンゼルスに長いことお住まいでしたが、そこから何か影響を受けられましたか。(L.A.には)非常に違った種類の“ノイズ”があったと思うのですが。
サロネン:
L.A.は大都会のような音がしないのです。都会的な密集がなく、全ては広く散らばっていますから。LAに住む殆どの人は一戸建てに住んでいて、ちょっとした庭を持っていて、そういったことは、ほとんど郊外生活の錯覚を作り出しています。ニューヨークやパリのような密集は、LAにはありません。
実のところ、私にとってニューヨークは、適応するための調整が必要な場所なのです。私はフィンランドのカントリー・ハウスで生活することに慣れていますし、L.A.の家も(静かな場所でしたし)、ロンドンに家がありますが、それもロンドンの最も閑静な場所にあります。ですからニューヨークは、本当に大変な場所なのです(笑)。

Q:今は、ロンドンをベースとなさっているのですか。
サロネン:
はい、そうです。今のところは、ロンドンが私の家です。

次は、マエストロの作品「ヘリックス」を作曲したときのことを伺います。

Photo by clive barda hi res

≪来日公演情報!≫
5月31日(月) 19時開演 サントリーホール
6月2日(水) 19時開演 サントリーホール
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