2010年11月16日

マルティン・コス(コンサートマスター)へインタビュー[スーク室内オーケストラ]

スーク室内オーケストラのコンサートマスター、マルティン・コスからメッセージが届きました。
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−スーク室内オーケストラの特色は?
響きについては私は多少、誇りを持っています。というのは、私たちのオーケストラには複数のソリストがいるのです。最低でもグループリーダー、つまりチェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンの第一奏者、そして勿論私も含めてリーダーたちはオーケストラ伴奏でソリストとしても演奏することができます。自分たちの演奏会でもしばしば、そのような形式で演奏をしているのです。私たちにそのようなメンバーがたくさんいるということは、音色についても必ず何か特別なものが伴っているに違いありません。

−今回は私たちにあまり馴染みの深くない作曲家、ディッタースドルフの曲もありますね。コントラバスとヴィオラのための協奏交響曲。日本では実はそれほどポピュラーな曲ではないのですが、この作品についてご説明いただけますか?
ディッタースドルフはチェコの古典派の作曲家で、チェコというか中欧ではかなり知られています。彼は自分自身が演奏家として巨匠でした。この曲はつまりコントラバスのヴィオラのヴィルゥオーゾのための曲に弦楽オーケストラの伴奏がついている作品なのです。

−どうもありがとうございました。色々と聞かせていただき、本当に役にたちました。最後に日本で皆様を待ちわびているファンに一言お願いします。
スーク室内オーケストラを代表して日本の聴衆の皆様に心より歓迎のご挨拶を申し上げます。私たちの演奏会で皆様にお会いできるのをとても心待ちにしています。日本の皆様に幸運がありますように。私たちは皆、ツアーを楽しみにしております。


≪公演情報≫
2010年12月17日(金) 19時開演 紀尾井ホール
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全国スケジュールや詳しい情報はこちらから


≪マルティン・コス プロフィール≫
マルティン・コス Martin Kos (ヴァイオリン/Violin)

ピルゼンの音楽学校を経て、1995年プラハ音楽院を卒業。1995〜98年、M.ノスティッツ弦楽四重奏団のメンバーとなり、マルティヌー賞を受賞。同アンサンブルは、1997年オランダの国際室内楽コンテスト(チャールズ・ヘンネン・コンクール)で優勝し、1998年プラハの春国際コンクール第2位を獲得した。1999年以降はスーク室内オーケストラのコンサートマスターとリーダーを務めている。2005年までコンサートマスターを務めたチェコ九重奏団とは、スペイン、ドイツ等へのツアーで大成功を収めている。 2003年7月、イタリアの国際室内楽コンクール“ロヴェーレ・ドーロ”にて、シュテパーン・コスと兄弟で第4位を獲得。2005年のプラハの春国際音楽祭でスーク室内オーケストラのソリストも務めた。
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2010年11月10日

パーヴォ・ヤルヴィ指揮、ドイツカンマーフィルハーモニー管弦楽団がいよいよ来日!

2010年11月末にパーヴォ・ヤルヴィ率いるドイツカンマーフィルハーモニー管弦楽団が来日する。来日に先立ち、音楽評論 舩木篤也さんのインタビューをお届けします。

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≪新世紀の巨匠がこだわり続けるベートーヴェン≫
 ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団が、芸術監督パーヴォ・ヤルヴィとともにベートーヴェンの全交響曲をまとめて世に問うたのは、2006年5月のこと。所は、ほかでもない日本であった。横浜みなとみらいホールにて、3日間で全9曲を演奏したのだ。評判は、たちまち日本中に広まり、ついには世界を駆けめぐった。
話題になったのは、その短い日程のためばかりではない。何度も見たはずの名画を初めて見るような思いを、みなが抱いたのだった。スコアが透けて見えるような透明感。音符が踊っているかのような躍動感。北ドイツはブレーメンに本拠をもつこの音楽隊は、編成規模が40名から50名程度と小ぶりだ(ドイツ語にいう「カンマー」とは、英語のチェンバー、室内を意味する)。だがなによりも、彼らの類まれな自発性、瞬発力こそがものをいっている。彼らは、まことによく聴き合い、まことによく動く。今年9月、先にシューマンの項で触れたボンでの「ベートーヴェン音楽祭」で、パーヴォ・ヤルヴィは筆者にこう語ってくれた。
 「ご感想は、まったくそのとおりだと思いますよ。彼らはみな優れた音楽的知性の持ちぬしで、反応がすこぶる速い。室内楽的な感覚でもって、あらゆる局面に深くコミットしてゆきます。私との関係でいえば、10年以上も共演しているので――平均的な結婚期間よりも長いですね(笑)――互いによく理解し合っているというのがあります。しかも一定のプロジェクトのもとに、同じ作品を何度も練習するから、焦点がどんどん明確になってゆく。逆説的なことですが、だからこそ自発性や柔軟性も生きてくるのです」
 そう、彼らはプロジェクトの重心をシューマンに移し始めたが、ベートーヴェン・プロジェクトも各地で続行中だ。このたびの12月の日本公演でも、2006年、07年の来日時に続き、全国でまたベートーヴェン演奏を披露してくれる。
 「最初のあの横浜公演は、もうずいぶん昔のことのように思えますね。私たちのベートーヴェンも、世界各地で繰り返してきましたから、大いに変わりましたよ。録音物は、いちど定着したら、いつまでも変わらないわけですが、こちらの脳は変ってゆく。私も楽団も、この間、少しは進歩しているのではないかな(笑)。最も大きいのは、演奏においてより自由が増したこと。実験への勇気が増しました」
 
今回もっとも多く演奏されるのが、交響曲第5番《運命》。「実験」といえば、彼らの《運命》でひときわ印象的なもののひとつに、終楽章に現れるピッコロ・フルートがある。それまでどこでも耳にしたことがないような、猛烈な勢いと鋭い響きで、これを聴いて思い出されるのが「革命音楽」だ。《運命》が作曲された当時、1800年前後のヨーロッパでは、フランス革命を受けて「革命音楽」が流行したが、その目印の一つが、管弦楽へのピッコロの導入だった。
 「あのピッコロは、たんに楽譜上の1パートを担う存在に留まるものではありません。マッチの火がシュッと点るように、目に見えるようでなければならない。そうしてこそ革命音楽の印象を生むのです。大きすぎず、小さすぎずといった、当たりさわりのない音では駄目なのです」
 
飽くことなく演奏され続けてきた作品であっても、み過ごしていたところ、うもれがちだった側面というものはあるもの。そんな知られざる面が、また浮き彫りにされることを期待したい。
 「従来うもれがちだった側面が聞こえるようになるかどうかは、演奏する側の想像力にかかっていてね。時間をかけて取り組んではじめて、それだけの想像力が培われる。そして、その想像力を十全に発揮するには、私の師、バーンスタインがよく言ったように、演奏中は“知っていること”を忘れて、“感じるまま”に従うことです。私はそもそも、どちらかといえば感覚的な人間ですし(笑)」
ほかに交響曲第4番、《プロメテウスの創造物》序曲も演奏されるが、横浜公演では《大フーガ》(弦楽合奏版)という珍しいレパートリが聴ける。これは、もと弦楽四重奏曲第13番の終楽章として構想されたピースであるが、究極のフーガ、紙の上の実験といった趣きを呈すため、別ピースと差しかえざるを得なくなったといういわく付きの音楽である。今日でも依然として、弦楽合奏版であればなおのこと、演奏至難の作品であるに違いない。
 「一個の“ベートーヴェン・オーケストラ”として、私たちは交響曲以外にも、協奏曲や序曲を日本でも演奏してきましたが、今回はこれまでに紹介してこなかった通常とは違った演目を、と考えました。これは疑いなく偉大な作品であり、やるほかないという類のものです。ベートーヴェン・プロジェクトをスタートした当初から、私たちは各地でこれを演奏しており、いまやコア・レパートリの一つとなっています」
 
ベートーヴェン・オーケストラ――確たる自負がなければ、ここまで言えるものではない。この間、交響曲全集のレコーディングも完結している。そこに耳を澄ますと、2006年のライヴでは聴かれなかったディテールが、そこここに認められる。そうした変化を楽しみたい人も、今度こそは逃したくないと思っている人も、ぜひ。


≪パーヴォ・ヤルヴィ、ドイツ・カンマーとの渾身の“シューマン・プロジェクト”を語る≫
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 2006年、07年の来日公演、さらには完結なった全交響曲の録音と、パーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団といえば、なんといってもベートーヴェンというイメージが強いに違いない。聴き慣れた楽曲が、しかも古楽器による演奏など、さまざまな試みが出つくしたと思われた後でなお、あれほど鮮烈に響いたのだ。インパクトは大きい。
 もちろん彼らは、別項でも述べるとおり、今もベートーヴェンを続けているし、その演奏は相変わらず刺激的だ。けれども、次にシューマンを集中的にやると聞いたとき、筆者は文字どおり快哉を叫んだものである。大作曲家の管弦楽曲のなかで、シューマンのそれほど不当に冷遇されているものはない。連中ならシューマンを、「ピアノ曲と歌曲“だけ”の作曲家」というあの偏見から、決定的に救い出してくれるに違いない。
「その偏見は、日本だけじゃない、世界中どこにでもありますよ。いつの間にか聞かされているのですね、シューマンのオーケストラ曲は大したことはないと。専門家も、形式がない、音色が地味だ、響きがすっきりしない等々と、ずっと繰り返してきました。でも、真実はそうではないのです」
 さる9月、パーヴォ・ヤルヴィは熱をこめてそう語った。ドイツはボンで取材したときのことである。ブレーメンに本拠を置くドイツ・カンマーフィルであるが、ボンの「ベートーヴェン音楽祭」でもレジデント・オーケストラとしてすっかりおなじみ。「シューマン・プロジェクト」として、昨年の12月以来、各地で交響曲全4曲と、協奏曲、幾つかの管弦楽曲を演奏してきた彼らが、ここベートーヴェンの生地で今回メインに据えたのもシューマンであったが、《マンフレッド》序曲に始まり交響曲第3番《ライン》で締めくくられた開幕コンサートは、大いに沸いた。
 「たしかに、ブラームス的な形式をシューマンに求めても、見つからないでしょう。ブラームスの態度は、何事においても“モデラート”(節度をもって)です。対してシューマンは、喜び、悲しみ、怒り、すべての感情を露わにし、躁状態と鬱状態の落差もまことに激しい。スキゾフレニック(分裂的)と言ってもよいくらいです。《マンフレッド》序曲の開始など、どうですか。いきなりバン!バン!バン!ときて、すぐに黙り込んでしまう。チェロが情熱的な旋律を弾くところにしても、始まりは確かにただの4分音符の連なりです。しかし序曲に続く劇中で、主人公マンフレッドがこの旋律で歌っていると考えてみてください。ア〜スタ〜ルテ〜と、ね(注:アスタルテは、マンフレッドが愛した女性の名。バイロン原作)。ここは嘆願するように演奏すべきなのです。こうした過剰を“ならして”演奏するケースが多くありますが、私たちはその過剰こそをはっきりと示すようにします。そこが魅力なのですから」
 
実際、ボンで耳にした演奏は、その通りだった。あらゆるパートが噛みつかんばかりに飛び交っている。弦は、エネルギッシュにスピーディにこする弓のもと、がりがりと唸りを上げるほど。容赦なく切り込んでくる金管楽器、たたみかけながら猛烈にクレッシェンドするティンパニ――心臓を鷲づかみにされる思いだ。
 しかし、彼らのシューマンで真に感嘆するのは、これほどまでにエモーショナルでありながら、やりたい放題の恣意性がみじんも感じられない点である。思うにそれは、ポリフォニー(多声性)を、しっかりと押さえているからだろう。「そこにそんな音があったのか」と、何度驚かされたことか。
 「シューマンのポリフォニーは、中世の教会音楽やバロック音楽に関する該博な知識に基づいたものです。エモーショナルだけれど、学識ゆたか。それがシューマンなのです。響きが濁るということはなく、編成規模を作曲当時の40名程度にセット・アップすれば、なんら問題はありません。私は、《ライン》の第1楽章で一箇所だけ、ファゴットにホルンを重ねますが――そこでの旋律線は聴こえないと致命的になるので――、それ以外はシューマンが書いたとおりに演奏しますよ」
 
19世紀の初めに書かれたベートーヴェンの交響曲では、バルブのないナチュラル・トランペットと“クラシカル・ティンパニ”(パーヴォはそう呼ぶ)を導入していた彼らだが、シューマンでは、いわゆるピリオド楽器を使用しない(ただし弦楽奏者は、高いほうの2線で羊腸を素材としたガット弦を用いる)。
 「シューマンの時代[19世紀中葉]には、すでにバルブ付きのトランペットを使っていましたし、ティンパニにしても半音階が求められていますからね。ホルンは一部ナチュラル・タイプが求められていたではないか、と仰るかもしれませんが、楽員にかかる負担という実際面も、私たちは考慮します。モダン・タイプのほうがより確実にプレイできるなら、そちらをとるということです。それに、首席奏者のエルケなんかがそうですが、モダン・タイプを用いながら、あえてナチュラル・タイプのサウンドを創ることだってできるんですよ」
 
この楽団は、ヴァイオリン奏者に、第1ヴァイオリン専門、第2ヴァイオリン専門の区別を設けられておらず、座る席さえも(首席を除いて)決めていない。誰もが序列なく、高度な責任を分かち合っているわけで、入念なフレージングも隅々にまでわたって実現できるわけだ。これだけの透明度、色彩感の秘密は、そんなところにもありそうだ。
 「私たちは、ベートーヴェン・プロジェクトからシューマン・プロジェクトに移行したわけですが、それは理にかなっていたと思います。シューマンもベートーヴェンと同様、古い絵画さながらに、積もった塵を洗い落とす必要がありますからね。それに、これは個人的な話になりますが、私はシューマンをどの作曲家よりも愛しているのです」
 
今回のライヴで「シューマン開眼」を果たす人も多いのでは? パーヴォ・ヤルヴィと同じくシューマンを愛してやまない筆者も、ここ日本でふたたび聴けるのを心待ちにしている。

文:舩木篤也(音楽評論)


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≪2010年日本公演日程≫

2010年11月23日(火)北九州厚生年金会館
問合先:北九州厚生年金会館 093-592-5405
ベートーヴェン:「プロメテウスの創造物」Op.43より序曲
       :交響曲第4番
       :交響曲第5番


11月24日(水)東京文化会館
問合先:都民劇場 03-3572-4311
ベートーヴェン:「プロメテウスの創造物」Op.43より序曲
       :ヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリン:ジャニーヌ・ヤンセン)
       :交響曲第5番

11月25日(木)NHKホール(NHK音楽祭2010)
問合先:ハローダイヤル 03-5777-8600
ベートーヴェン:「プロメテウスの創造物」Op.43より序曲
       :ヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリン:ジャニーヌ・ヤンセン)
       :交響曲第5番

11月27日(土)横浜みなとみらいホール
問合先:横浜みなとみらいホールチケットセンター 045-682-2000
シューマン:序曲「スケルツォとフィナーレ」
ベートーヴェン:「大フーガ」
       :交響曲第5番

11月28日(日)豊田コンサートホール
問合先:豊田コンサートホール 0565-35-8200
ベートーヴェン:「プロメテウスの創造物」Op.43より序曲
       :交響曲第4番
       :交響曲第5番

12月 1日(水)いずみホール
問合先:いずみホール チケットセンター 06-6944-1188
シューマン:序曲「スケルツォとフィナーレ」
     :交響曲第4番
     :交響曲第1番

12月2日(木)いずみホール
問合先:いずみホール チケットセンター 06-6944-1188
シューマン:マンフレッド序曲
     :交響曲第2番
     :交響曲第3番

12月3日(金)東京オペラシティコンサートホール
問合先:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999
シューマン:序曲「スケルツォとフィナーレ」
     :交響曲第4番
     :交響曲第1番

12月 4日(土)東京オペラシティコンサートホール
問合先:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999
シューマン:マンフレッド序曲
     :交響曲第2番
     :交響曲第3番

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