まずは河村尚子のメッセージをご覧ください。
日本の皆さまへ!
ベルリンよりこんにちは。
こちらはとってもよい天気です。
今日、ベルリンラジオ放送局で、マエストロ・ヤノフスキとの打合せの後、70分程のリハーサルを行いました。
始めは少し緊張していたのかピアノの弦まで切ってしまいましたが、終始とても良い練習雰囲気で、時間が経つにつれて私もオーケストラも、お互いぐっとなじんでいったと思います。
驚くべきことに、知り合いが数人オケの中にいて、ツアーも楽しくなりそうです。
早いもので、もうすぐ日本。
本番が待ち遠しいです。
まもなくお会いできることを楽しみにしいます!
河村尚子
10月の来日公演を控えたベルリン放送交響楽団が、今回ソリストを務める河村尚子を迎えてベルリンでリハーサルを行った。その模様をお届けします。
9月22日、午後からのリハーサルが始まる少し前、会場のHaus der Rundfunkに行ってみると、全体練習の前に指揮者とソリストが合わせの確認をしていた。河村のピアノにじっくり耳を傾け、アドバイスを送るマレク・ヤノフスキ。真剣なまなざしだが、その表情はどこか温かい。
「ヤノフスキさんにお会いするのは1年半ぶりだったのですが、会話での私の呼び方が敬称のSieだったり親称のDuだったり…。お客さんというよりも、一緒に音楽をする仲間として受け入れてくれたような気がしました。これはオケの方々も同じです」と河村はリハーサル後に語ってくれた。
やがて、全体練習が始まった。壮麗極まりないベートーヴェンの「皇帝」のあの序奏。コンチェルトの伴奏ながら、オーケストラはコントラバス8本、第1ヴァイオリン16人の大編成だ。前列で聴くと、フル編成の弦楽器の強烈な音圧が体にビリビリと伝わってくる。だが、この音の激流を前にしても、河村のピアノはフォルテから再弱音まで実によく通る。きらきらした高音のアルペジオも美しい。それは後半、ホールの後ろの方で聴いた時も同様だった。
特に素晴らしいと感じたのは、第1楽章の中間部以降の多彩な展開。正直、筆者はこの長大な楽章を聴いているとき、身を持て余すことが少なからずあったのだが、河村のピアノで聴いて、この名曲の尽きぬ魅力を再発見した気持ちだった。木管との親密なやり取り、時々聴こえてくる深遠な音色…。河村はオケの音にもしっかり耳を傾け、対話し、共に作り上げていく。それは、若い奏者にたまに見られる、技巧を誇示するかのような演奏とは一線を画するものだ。この作品について河村はこんなことを語った。
「『皇帝』は勉強し始めてまだ2年半なのですが、その間、ヨーロッパや日本で何度も演奏させていただく機会がありました。時間を置いて演奏を重ねることで、私の解釈も変わってきたように思います。ベートーヴェンがどのようにしてオーケストラとピアノをつなげようとしているか、今はよくわかります。例えば、あるメロディーをオーケストラが演奏して、同じテーマに少し変調を加えてピアノが続く。そのような『会話』は、弾いていてとても楽しいですね。『皇帝』に限らず、ベートーヴェンの音楽は一見同じメロディーばかりを使っているように見えて、どれも全然違うように聴こえませんか?そこが素晴らしいところだと思います」
河村が「この音楽を前にすると、ベートーヴェンという人はどれだけ深い愛を持っていたのだろうかと感じる」と言う第2楽章の甘美さ。フィナーレではオーケストラの豪快な響きとソリストの高い技術が重なり合って、本番での高い燃焼を予感させた。
河村にとって、ベートーヴェンという作曲家はどういう存在なのだろう?
「子供の頃からベートーヴェンはよく弾いていたのですが、当時はどこか義務的なところがありました。彼のことが本当に好きなのだと思うようになったのは、シンフォニーを聴くようになってからです。実験を重ねて、次々と新しい世界を作り上げたその勇気とアイデア、探究心に深い感銘を受けるようになりました。あと私がベートーヴェンの音楽に感じるのは、彼は人生の中で苦しい思いもたくさん味わったけれども、どこかでオプティミストだったのではないかということ。心の中に光を持っていたからこそ、あのような音楽を書けたのだと思います」
リハーサルはスムーズに進み、予定より少し早めに終わると、オーケストラの団員から河村に対して盛大な拍手が送られた。名匠ヤノフスキ指揮のベルリン放送響と河村尚子が奏でる『皇帝』は、ドイツの伝統の響きと河村のフレッシュな魅力が合わさった大きな聴きものになるだろう。
インタビュー・構成:中村真人(ベルリン在住)
マレク・ヤノフスキ指揮 ベルリン放送交響楽団
2011年10月10日(月・祝) 14時開演 横浜みなとみらいホール
「エグモント」」序曲 作品84
ピアノ協奏曲第5番「皇帝」変ホ長調 作品73(ピアノ:河村尚子)
交響曲第3番「英雄」変ホ長調 作品55
2011年10月14日(金) 19時開演 東京オペラシティコンサートホール
ブラームス:交響曲第3番 / 第4番
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