2011年12月20日

ウィーン・シュトラウス・フェスティヴァル・オーケストラのソリスト水口聡に聞く

新年はワルツが運ぶウィーンの『爽やかな空気』を

 この20年来、音楽の都ウィーンを拠点に、欧州各地の歌劇場でテノールのヒロイックな役柄を歌い成功を収め続ける水口聡。この1月にはウィーン・シュトラウス・フェスティヴァル・オーケストラの来日公演に参加、持ち前の逞しく豊かな美声をたっぷり披露するという。
 「武蔵野音楽大学の大学院を終えて24歳で渡欧しました。ウィーン音楽大学で学んでいた頃は、市の18区にある邸宅に下宿しながら、ほとんど毎日、山を越えて3時間以上も歩き続けて学校まで通っていました。ブドウ畑の中を歩いてゆくから、途中で歌っていても誰にも咎められないんですよ(笑)。声楽の場合、留学しても2〜3年で帰国する人が多いようですが、私自身は、オペラ歌手になるのが目的で渡航したからには、できる限り長く居ようと決めていました。実際、留学してから最初の八年間は一度も日本に帰国することはありませんでした。ただ、それから長い月日が経つうちに、ウィーンの街中の風景もかなり変わってきましたね。老舗が店を閉めてブランドショップになり、ジプシー音楽を聴かせるレストランもいつの間にか無くなってしまったり・・・それは寂しいものです。事実、古き良き都ウィーンの姿をそのままに伝えるものといったら、もはや、音楽でしかないのかもしれません」
 そう、帝都ウィーンの良き日々をまさに「音で再現」してくれるのが、指揮者ペーター・グート率いるウィーン・シュトラウス・フェスティヴァル・オーケストラ。水口は今回、オペレッタの数々の名曲を歌う予定。
 「まずは、フランツ・レハールの《ほほ笑みの国》の名アリア〈君はわが心のすべて〉を聴いて頂きたいです。この曲はCDにも録音済みで、オペレッタそのものも歌劇場で30回ぐらい演じましたが、それでも、歌うたびに難しいアリアだと思います。軽いメロディだと侮っていたらとんでもない。甘美でも実は重い曲で、こんなはずじゃなかった!と言いたくなるんですよ(笑)。ちなみに、このアリアは名テノールのリヒャルト・タウバーのために書かれたものですが、以前、ドイツの批評家が僕の本番を観て『タウバーよりも良く歌えている!』と批評記事に書いてくれたことがありました。その時は本当に嬉しかったですね」
 そして、ソプラノの鈴木慶江との顔合わせでご存知《メリー・ウイドー》のワルツ〈唇は語らずとも〉やエメーリヒ・カールマンの《伯爵令嬢マリッツァ》の名場面も披露する。
 「お話したようにオペレッタの曲はへヴィーなものが多いですが、メロディが良いからつい頑張っちゃいますよ(笑)!カールマンのメロディも名曲ばかりです。ハンガリー生まれの彼は、レハールと共にウインナ・オペレッタの『白銀時代』を築いた作曲家ですが、今回は彼の代表作の一つ《伯爵令嬢マリッツァ》から、名アリア〈ウィーンへ愛を込めて(夕べとなり陽が沈み)〉をまず歌います。この曲は、オペレッタのアリアとしても最高じゃないでしょうか。歌っていると大いに郷愁を誘われますね。このほか、鈴木さんと一緒に幕切れの二重唱〈はい、と言って、私の恋人よ〉も歌う予定です。主人公の令嬢がついに結婚を決意するロマンチックな名場面です。どうぞお楽しみに」
 ちなみに、今回のステージではもちろん、ヨハン・シュトラウス2世の《こうもり》序曲や〈皇帝円舞曲〉〈美しき青きドナウ〉、それに彼の二人の弟ヨーゼフ&エドゥアルトのワルツやポルカも演奏される予定。名人グートの采配のもとで、帝都の音の薫りを存分に伝えるコンサートになるに違いない。
 「ウィーンのお正月を彩る一つが、このシュトラウス・フェスティヴァル・オーケストラによるニューイヤー・コンサートです。指揮者のグートさんは、ヴァイオリンの即興演奏も得意とされていて、客席も皆それを楽しみにしています・・・そういえば、ウィーンのオペレッタ協会の現会長はヨハン・シュトラウス2世のひ孫に当るおばあさんですが、彼女は僕のウィーンの家の隣に住んでいるんですよ。音楽の歴史と共にある街ならではのご縁でしょう。年明けは、ワルツが運ぶウィーンの『爽やかな空気』をぜひ味わってみて下さい

岸 純信(オペラ研究家)


strauss_flyer.jpgウィーン・シュトラウス・フェスティヴァル・オーケストラ
ニューイヤー・コンサート2012


2012年1月11日(水) 19時開演 サントリーホール

曲目
ヨハン・シュトラウスU:《こうもり》より “序曲” “チャールダーシュ「ふるさとの調べよ」” ★

レハール:《ほほえみの国》より “君はわが心のすべて” ◎

ヨハン・シュトラウスU:皇帝円舞曲、美しく青きドナウ

レハール:《メリー・ウィドウ》より“メリー・ウィドウ・ワルツ” ★ ◎

★鈴木慶江 ◎水口聡

詳しい公演情報はこちらから
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2011年12月15日

掲載情報「音楽の友」2012年1月号

*2012年1月号『音楽の友』
“最新 指揮者徹底解剖”にチョン・ミョンフンのインタビューが掲載されました。
マリス・ヤンソンス、パーヴォ・ヤルヴィ、ファビオ・ルイジなども紹介されています。
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チョン・ミョンフン指揮 ソウル・フィルハーモニー管弦楽団
2012年1月16日(月) 19時開演 サントリーホール
曲目:
ドビュッシー:交響詩 “海” - 3つの交響的スケッチ
マーラー:交響曲 第1番 ニ長調 “巨人”

公演の詳しい情報
<チケット・問合せ>ジャパン・アーツぴあコールセンター 03-5774-3040
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2011年12月01日

アントニ・ヴィット氏インタビュー

国立ワルシャワ・フィルハーモニー指揮者、アントニ・ヴィット氏のインタビューをお届けします。
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指揮だけではなく、作曲も学ばれるなど豊かな音楽環境で過ごされたのかと思いますが、ご自身の音楽との出会い、どのような少年時代を過ごされたかを教えていただけますでしょうか?
―6歳の頃でした。私の家にはアップライトのピアノがあったのですが、ピアノを弾いている私の様子を見た母親が、私に向いていると思ったのでしょう、音楽学校に通わせてくれたのです。それが音楽を本格的に始めるきっかけでした。ですから最初はピアノをずっと弾いていました。ただ、私は音楽に限らずあらゆる分野に興味があって、実はヤギェロン大学〔注:ポーランドのクラクフにある国立総合大学〕に通って法学を修めてもいます。当時、私は一般の大学と、音楽アカデミーの両方に通っていたのです。その頃は音楽においても、ピアノのほか様々な方面に興味を持っていましたが、例えば指揮者になりたいと思ったところで将来自分の振れるオーケストラが無ければ仕事にはなりません。自分が将来何になるのかについてはまだ定まっていませんでした。でも指揮者になりたいとはっきり思うようになったのは19歳の頃でした。

長いキャリアを持つマエストロですが、音楽家としてのキャリアの中で大切な転機はいつ、どのようなことだったのでしょうか?
―1967年、ポーランド国内で行われた指揮者コンクールで優勝したことです。そしてその審査員でもあった指揮者ロヴィツキさんのアシスタントになりました。そのおかげで、私は彼の下で様々なオーケストラ、とりわけ、今私が率いているオーケストラを指揮することができるようになったのです。

次の来日ではチャイコフスキーがプログラムの一つに提案されていますが、この曲をお選びになったのはなぜでしょうか?協奏曲としてショパンが想定されていますが、この曲との相性についても何かお考えがあるのでしょうか?
―スラヴの音楽だからでしょう。チャイコフスキーもショパンも、スラヴ人音楽家ですから、近い関係にあると思います。そして時代も近い。もちろん他の作曲家でダメということではありませんが、例えばショパンの後にシェーンベルクを演奏するなんて考えられないでしょう(笑)?

マエストロは来日経験も多く、海外のオーケストラだけではなく日本のオーケストラとの共演も多いと聞いておりますが、どのような印象をお持ちでしょうか?何か思い出に残る日本でのエピソードはありますか?
―とにかく私は日本や日本のオーケストラが好きです。日本のオーケストラはとても真面目だと思います。例えばリハーサルで「ここはこうしましょう」と指示したことを集中してしっかり聞き、すぐに反映してくれる。一人ひとりのプレイヤーが、その指示をきちんと自分のこと、として受け取ってくれるのです。何となく、ではなくオーケストラが一体となって指示を実現してくれることで、結果として音楽的により大きな効果が生まれる。そのことがより大きな満足感をもたらしてくれます。
また、私が1975年にモニューシュコの歌劇『ハルカ』を上演するために来日したときには日本のアマチュア合唱団に出演してもらい、彼らと長い時間を過ごしたのですが、彼らが私たちに示してくれた好意やもてなしようは本当に忘れがたい思い出です。千秋楽後、なんと私を胴上げしたりしてくれたのですよ(笑)。

今回ともに来日なさった若いピアニストたちは、マエストロに支えられた、マエストロと共演できたことが最大の幸福の一つ、と語っていますが、マエストロご自身は彼らのような若いアーティストたちへの共感、これからについてどのように感じていらっしゃいますか?
―ワルシャワ・フィルとの共演が彼らにとって特別な経験だというのは確かでしょう。というのも、他のオーケストラがショパンの協奏曲を演奏しているのを私も聴いたことがありますけれども、どこかしら、その音楽をよく理解しきっていない演奏なのです。その点、私たちはショパンを知り尽くしている。私たちと共演することはショパンを演奏するにあたってピアニストにとってより快適なことでもあるし、同時に彼らもまたより良くショパンを知ることができるでしょう。そして両者の相互理解が更なる効果をもたらします。
今回の入賞者たちはみんな、本当に素晴らしいピアニストだと思います。プロフェッショナルで、優れた実力を持っていると思います。ただ、今や世界中に本当に素晴らしいピアニストが、様々なアーティストがひしめいています。そんな中で成功を掴むことは容易ではない、というのは確かなことです。これからもしっかり自分を見つめて、是非、大きく飛躍して欲しいと思います。

来日してくださるワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団は、世界の中においてどのような特色を持つオーケストラだと感じていらっしゃいますでしょうか?
―ワルシャワ・フィルは今年で創設110周年を迎えるポーランドで最も長い歴史を持つオーケストラです。ポーランドを、スラヴを代表するオーケストラと言えるでしょう。今もメンバーのほとんどがポーランド人であるわけですが、だからといって特別な特徴というのはありません。というのも今ではグローバル化の波におされて世界中のどのオーケストラをとってもほとんど差が見られなくなってきていると思うからです。例えば日本だって、私が初めて日本に来た頃とはずいぶん変わってしまった。当時はもっと日本らしい街並みだったし、着物を着た女性もたくさん町を歩いていましたね。でも今ではすっかり欧米化してしまった。同じことだと思います。ずっと以前は私たちワルシャワ・フィルも、もっと違ったポーランドらしさを持っていたと思いますが、今ではそれはずいぶん均質化しています。これは良いことでもありますが、やはり少し残念な部分でもありますね。

日本のファンにメッセージをお願いいたします。
―日本で演奏する機会を与えていただけるということは本当に嬉しいことです。前にも言いましたが、私は本当に日本が好きなので。また、私たちはCDなどの録音もたくさん手がけているのですが、日本の聴衆の中にはそういった録音で私のことを知ってくださり、来日を待ち望んでおられる方も多いようです。ある時など、終演後に私の手がけたCDを25枚も持って、サインしてほしい、と頼まれたこともありました。そんな日本の聴衆の皆さんの前でまた演奏できることを楽しみにしています。

インタビュー:平岩 (2011年1月25日)

≪ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団 日本公演≫
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2012年2月21日(火) 19時開演 東京オペラシティ コンサートホール
アントニ・ヴィット(指揮) / 中村紘子(ピアノ)
曲目:
モニューシュコ:歌劇「パリア」序曲
ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 Op.11( ピアノ:中村紘子)
ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」

2012年2月22日(水) 19時開演 東京オペラシティコンサートホール
ミハウ・ドヴォジンスキ(指揮) / 千住真理子(ヴァイオリン)
曲目:
モニューシュコ:喜歌劇「新ドン・キホーテすなわち百の愚行」序曲
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.35 (ヴァイオリン:千住真理子)
ドヴォルザーク:交響曲 第9番「新世界より」

公演の詳しい情報はこちらから
posted by Japan Arts at 16:28| インタビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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