2012年04月18日

レ・ヴァン・フランセ、王子ホール・レポート

4月17日 レ・ヴァン・フランセの王子ホール
lvf.jpg
<プログラム>
ラヴェル:クープランの墓
ツェムリンスキー:ユモレスク(ロンド)
タファネル:木管五重奏曲
シャンドール・ヴェレシュ:オーボエ、クラリネット、バソンのためのソナチネ
バーバー:夏の音楽
プーランク:六重奏曲

一言でいうと、「とても面白くいろんな発見のある」コンサート。
東京での公演は4月20日(金)19時 東京オペラシティコンサートホール。多くの方にこの素敵な魅力に溢れたコンサートを聴いて頂きたいです。

 とても上質感があり、木管五重奏&ピアノの魅力を存分に感じることのできるコンサートでした。木管楽器は人間の息を吹き込んで演奏するということもあるかと思いますが、アーティストと楽器が完全に同化・一体化していて、アーティストそのものから音楽が生まれているということを実感する演奏。
 普段、フルート、オーボエ、クラリネット、バソン、ホルンは、ソロ楽器としてそれぞれ耳あたりの良い優しい音色という印象ですが、五重奏というアンサンブルになると、各作品によってがらりと音の表情が変わるのが面白く印象的。牧歌的な音のときもあれば、時には切り込むような硬い音色だったりと。
 どの作品も技術的にも難しい楽曲なのだと思いますが、そんなことを聴衆には微塵も感じさずに、音楽作品の面白さ、楽しさを堪能できるのは、真の名手達だからこそと思いました。
 バソンのオダーンの音をベースに、フルートのパユ、オーボエのルルーが自由に軽快に踊り遊び、ホルンのヴラトコヴィチやクラリネットのメイエがスパイシーな刺激を与え、伸び伸びと自由闊達で、それぞれの楽器から発された音色が織り成すように音楽を紡いでいくという印象で、木管五重奏の醍醐味を味えます。
 そして、ピアノのル=サージュが加わったプーランクの六重奏曲は、まさにレ・ヴァン・フランセの代名詞ともいえるだけあって、軽妙洒脱で魅力に溢れた素晴らしい演奏でした。

 普段からクラシック音楽に精通している方にこそ、新しい刺激や発見に満ちた演奏会になるのではないかと思います。
 4月20日(金)に東京オペラシティコンサートホールで演奏される作品は、「フランスと20世紀」と銘打っており、ふだん管楽器に触れていない方にとっては耳なじみのない楽曲かもしれませんが、真の名手による真の名演奏をお楽しみ頂けること請け合いです。

<公演情報>
4月20日(金)19時 東京オペラシティコンサートホール
〜フランスと20世紀〜
イベール:3つの小品
ニールセン:木管五重奏曲
ティエリー・ペク: 六重奏曲(レ・ヴァン・フランセのための委嘱作品。日本初演)
プーランク:オーボエ、バソンとピアノのための三重奏曲
ミヨー:ピアノ、フルート、オーボエ、クラリネットのためのソナタOp.47
プーランク:六重奏曲

―レ・ヴァン・フランセ―
エマニュエル・パユ(フルート)
ポール・メイエ(クラリネット)
フランソワ・ルルー(オーボエ)
ラドヴァン・ヴラトコヴィッチ(ホルン)
ジルベール・オダン(バソン)
エリック・ル・サージュ(ピアノ)

posted by Japan Arts at 16:08| メディア情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月09日

プレトニョフ指揮ロシア・ナショナル管弦楽団 パリ公演レポート

パリ サル・プレイエル 3月26日(月)
<プログラム>
グラズノフ:組曲「中世」〜プレリュード
プロコフィエフ:チェロ協奏曲第2番(交響的協奏曲)(チェロ:ゴーチエ・カプソン)
休憩
グラズノフ:交響曲第6番
アンコール グラズノフ:バレエ「ライモンダ」〜「スペイン舞曲」
m_pletnev.jpg

 アレクサンドル・グラズノフがフランスのクラシックコンサートで取り上げられることはきわめて珍しい。音楽愛好家よりもむしろバレエファンの方が「ライモンダ」の作曲家として記憶にとどめているかもしれない。それだけに、当日会場に入ってほぼ満席の盛況なのにちょっと驚いた。何しろ同じ時刻にオペラ座(ガルニエ)ではレハールの人気作「メリー・ウィドー」がスーザン・グラハムとボー・スコーフスという組み合わせであり、シャンゼリゼ劇場ではパリでも人気の高いレイフ・オヴェ・アンスネスがショパンの「ノクターン」と「バラード」とドビュッシーの「版画」と「映像・第1集」とを弾いていたからだ。
 ロシア・ナショナル管弦楽団のロシア音楽の夕べは何よりもパリでは滅多に聞けない曲が並んだのが魅力だった。指揮者のミハイル・プレトニョフは19世紀から20世紀への転回点に書かれたグラズノフの二作品(1902年と1896年)の間に、スターリンによる文化粛清時代の1952年に初演されたプロコフィエフ作品をはさみこむことで、20世紀前半のロシアがいかに激動し、全てが変わってしまったことを聞き手に体感させた。
 最初に取り上げられたのは「組曲:中世から」のプレリュードだった。終生オペラを書かなかったグラズノフだが、物語を管弦楽で表現しようとした作品は民衆の英雄を題材にした交響詩ステンカラージン」をはじめ、「森」「海」「春」といった作品を残しているが、「中世」もその系統に属する。「プレリュード」は「海辺の城の中。灰色の波頭のうねりも目に入らず、嵐の雄たけびも聞くことなく、若い二人は恋の静かな陶酔に身を委ねている」。嵐と叙情的な楽想が交互にあらわれ、情景を描き出していく。無駄のないコンパクトなプレトニョフの腕に導かれ、やわらかな弦楽器がよく揃い、管楽器が繊細な音色で甘い一幅の絵を織り成していく。副コンサートマスターを初め、若い女性ヴァイオリニストが目立つ。
 このロマンチックな出だしと対照的だったのが、プロコフィエフ最晩年の「チェロ協奏曲」だ。ゆったりとした旋律の流れるグラズノフから20世紀の非連続な音の世界が続けて演奏されただけに、その対照は鮮やかで半世紀の時の流れがどの聞き手にも手に取るように感じられた。
 独奏者はフランス人に人気のあるゴーチエ・カプソンだった。ロストロポーヴィチのために書かれ、「チェロのあらゆる技法と表現の可能性を探求した」だけに、単なるヴィルトゥオーゾには手が届かない。独奏者の詩情の不足を補って余りあったのが静かな吸引力を持ったプレトニョフが自在に操ったオーケストラだった。
 休憩後はグラズノフの「交響曲第6番」で再び悠揚とした時間が流れていた19世紀に遡行した。厳かな深みのある低弦でスタートし、第二楽章(アンダンテ)ではあくまでも穏やかで優しいテーマが耳を捕らえる。澄んだ中にもメランコリーを湛えたクラリネットのソロは秀逸だ。最終楽章のフィナーレではシンバルの連打とトロンボーンの厚みのある音が咆哮し、華やいだ音の祭典となった。抑制された身振りと鋭い視線のプレトニョフが自在にオーケストラを操っている姿そのものも観客にとっては見逃せないスペクタクルとなっていた。

三光 洋(音楽ジャーナリスト / パリ在住)



プレトニョフ指揮 ロシア・ナショナル管弦楽団 2012年日本公演
2012年6月15日(金) 19時開演 東京オペラシティ コンサートホール
 ヴァイオリン:樫本大進
2012年6月23日(土) 14時開演 横浜みなとみらいホール
 ピアノ:河村尚子
russian_flyer.jpg
公演の詳細はこちらから

posted by Japan Arts at 14:13| レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月05日

パーヴォ・ヤルヴィにインタビュー(2)

paavo_2.jpg
Q:ドイツ・カンマーフィルハーモニー管にとって、ベートーヴェンは最も重要なレパートリーですが、他のオーケストラとベートーヴェン・プロジェクトを行う気持ちはありますか?

A:もちろんどこの団体でもベートーヴェンは演奏しなくてはならない。しかし、ドイツ•カンマーフィルハーモニー管で行っているようなチクルスは行うつもりはありません。
重要なことは、視界を狭めてはならない、ということです。色々な作品を演奏することで、柔軟性や可能性を高めていくことができるのです。ですから、こういったドイツの室内オーケストラでも、シベリウスやショスタコーヴィチを演奏します。

Q:フランクフルト放送響とは、ホームグラウンドでの定期演奏会の他に頻繁にツアーも行いますか?
A:はい、大体年間で短いものと長いものを含めて2,3回はツアーを行っています。今シーズンはスペイン、オーストリア、そして日本です。その他にレコーディング・プロジェクトが2つ進行しています。今、ブルックナー全曲に取り組んでいて、まもなく第5番交響曲がリリースされる予定です。もうひとつはニールセンのチクルスです。彼らはブルックナーで有名ですが、ニールセンの作品にも非常に適しています。チクルスをやることによって、作曲家をより深く理解することができるのです。1曲だけでは十分ではないのです。
ニールセンのようにドイツ音楽ではない作品が含まれていても、フランクフルトでの公演は常に満席です。シーズン会員は、とにかくフランクフルト放送響と彼らの演奏を愛しています。彼らが紹介する音楽を心から楽しみにしているのです。

Q:最近のツアーやコンサートの中で、これは成功!という実感を得たものはありますか?
A:
去年のオーストリア・ツアーですね。最終公演はウィーンの楽友協会でブルックナーの第5番を演奏しました。非常に高く評価された大成功の演奏会だったという手ごたえがあります。

Q:長年一緒に活動してくることによって、オーケストラとはどうように関係を深めていくのでしょうか。
A:
1つのオーケストラと時間をかけて仕事をすると、一種家族のような関係になります。何を期待しているかが判るようになるのです。音楽作りにおいて柔軟になり、良質な前向きな音楽が生まれます。そのような関係においては、新しいことを実験したいという気持ちが生まれます。演奏中にも新しい閃きがあるのです。お互いによく知っている仲なので、瞬間に決断をすることもできます。これは信頼関係があってこそ受け入れられ、反応できる柔軟性です。もしオーケストラが私を信頼していなければ、リハーサルで確認したこと以外は絶対に行いません。時に、彼らはどこに導かれるかわからないことがあるかもしれません。でも、私が行きたい方向がある、ということは判っていて、信じていてくれている、そんな信頼関係なのです。いずれにしても、信頼関係を勝ち取るには時間をかける必要があります。

Q:今回のツアーで共演する2人のソリストについて、あなたのご意見を聞かせてください。
A:
ヒラリー(・ハーン)とはこれまでにも何回も共演しています。シンシナティ響、ドイツ・カンマーフィル、そしてフランクフルト放送響でも共演しました。非常に強い個性をもっており、音楽に主張があります。オーケストラ同様、相手を良く知れば知るほどそこには自由が生まれ、互いに影響を与え合うことができるようになります。我々は、舞台上でとても自由になれます。アリス=紗良・オットはフランクフルト放送響でも共演しました。とても快活で、彼女もまた強い個性の持ち主ですね。

Q:2つのメイン曲(ブルックナー:交響曲第8番、マーラー:交響曲第5番)について、マエストロのお考えを聞かせてください。
A:
言うまでもなくこれらの作品は偉大なる名作です。それぞれの性格は違いますが、両方とも意味深く、複雑で、洗練された宇宙そのもの、作品そのものがひとつの世界を形成しています。これ以上の名曲はない、といってもいいほどでしょう。
繰り返しになりますが、フランクフルト放送響はブルックナーを知り尽くしていますが、我々はマーラーも現在DVDでの全曲収録に取り組んでいます。すでに2,3,4,5,7,9番の交響曲を収録しました。マーラーにもまた、”無限大“の力を感じます。なにかを訴えかける音楽です。
フランクフルト放送響は、ブルックナーでは巨大なドイツのオーケストラになる一方、マーラーでは、より柔軟性をおび色彩鮮やかな演奏を繰り広げることができるオーケストラなのです。

Q:あなたが共演を好むソリストとは?
A:20年も指揮者として活動していると、家族のように親しい音楽仲間ができます。例えばラドゥ・ルプーとは何度も共演し、個人的にも親しいし、お互いを理解しあえる仲間です。お互いが好きな相手だと、自然とよい音楽が生まれるのです。
その一方で、私は才能ある新しいアーティストにも大変興味があります。そういった意味で、アリスには非常に興味があり、共演をしたところ大変快活で興味深い音楽を演奏するピアニストだと思いました。

Q:この多忙なスケジュールの中、どうやって健康維持をしているのでしょうか?
A:
なにか特別に取り組んでいることはありません。この健康な身体を、よい遺伝子を授けてくれた両親に感謝です。強いて言えば、指揮自体が身体にいいのではないでしょうか。特に上半身運動になるし、音楽作り事態が若々しさを与えてくれます。

Q:最後に日本の皆さんにメッセージをお願いします。
A:
私は日本に行くことがいつも楽しみでなりません。なぜなら日本は、私の大好きな聴衆のために演奏ができる場所だからです。昨年はパリ管と初めて来日しましたが、聴衆が私の音楽を理解し、喜んでくれることを感じ取り、聴衆との繋がりを強く実感しました。私は自分自身のためではなく、誰かのために音楽を演奏します。ですから、音楽を理解し、聴き、喜んでいただけることは、私たち音楽家にとってこれほど最高に幸せなことなのです。なぜならば、我々音楽家はそのために演奏しているのですから。もちろん日本は食べ物も文化も素晴らしい。けれども聴衆の皆さんの真摯な姿勢こそ、我々アーティストにとって最も重要なことであり、“日本”の素晴らしさそのものなのです。

私たちにとっても、マエストロは本当に特別な存在です。来日を楽しみにしています。ありがとうございました。

(2012年2月3日 ブレーメンにて)


パーヴォ・ヤルヴィ指揮
フランクフルト放送交響楽団
Frankfurt_flyer.jpg
2012年6月6日(水) 19時開演 サントリーホール
曲目:
リスト:ピアノ協奏曲 第1番 変ホ長調
 (ピアノ:アリス=紗良・オット)
マーラー:交響曲第5番 嬰ハ短調


2012年6月7日(木)19時開演 サントリーホール 
曲目:
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調
 (ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン)
ブルックナー:交響曲第8番 ハ短調

詳しい公演情報はこちらから

posted by Japan Arts at 10:36| 聴きに行こう!オーケストラPR | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。