パーヴォ・ヤルヴィと、フランクフルト放送交響楽団との共演を前にインタビューを行いました。
Q:6月に、パーヴォ・ヤルヴィ指揮フランクフルト放送交響楽団との日本ツアーで演奏していただく、リストのピアノ協奏曲第1番変ホ長調ですが、この作品を最初に演奏したのはいつですか?
アリス=紗良・オット(ASO):この作品は、14歳の時、私が初めてオーケストラと共演した思い出の曲です。その後もよく演奏していますので、一番長く取り組んでいる作品ですね。
Q:初めてオーケストラと共演する作品に、リストを選ぶなんてとても意欲的ですね。
ASO:この曲は聴いた時から「私にぴったり!」と思える作品でした。テクニック的にも華やかな技巧が必要とされますが、その時は「だからこそ、挑戦してみたい!」と思いましたし、それをマスターしていくことも楽しかったのです。でも、当時と今とではこの曲に対する考え方は大きく変わりました。
Q:どういう風に変化していったのですか?
ASO:この作品に初めて取り組んだ時は、ピアニストがテクニックを披露する曲、というふうに考えていました。リスト自身も素晴らしいピアニストで超絶技巧が有名でしたし、実際にテクニック的にもハードな曲です。しかし、その側面ばかりを追いかけてしまうと、この作品の本質的な魅力に触れることができないかもしれません。
この作品には彼自身の革新的、チャレンジングなところが非常によく表れていると思います。彼は非常に才能に恵まれていましたが、それをさらに磨き続け、自分の人生を自らの手で拓いていった人ですよね。そんな彼の人生を、この作品の中で表現したいと思っています。それから全ての楽章を通して演奏するというスタイルも独特です。彼の伝統的なものを超越したいという意図があるように感じますし、駆け抜ける!というイメージにもリストらしさを感じます。
Q:パーヴォ・ヤルヴィ氏とは、すでに何回か共演なさっているのでしょうか?
ASO:今までに2回共演しています。最初はシンシナティ交響楽団とリストの協奏曲を、次はフランクフルト放送交響楽団とラヴェルの協奏曲を演奏しました。
Q:リストのピアノ協奏曲を共演した時に、パーヴォ・ヤルヴィ氏からいただいたアドバイスで印象的なことはありますか?
ASO:そうですね。本当にたくさんのことをアドバイスしていただきました。マエストロの解釈はとてもユニークですし、共感できることも多いです。ここはもう少しジャズっぽく感じてみたら・・・なんてアドバイスしていただいた部分もあります。
マエストロとの共演は、毎回とても楽しみです。というのも、マエストロは私の音楽、私が表現したいことを、いつも大切にサポートしてくださるから。ソロで演奏する時は、すべて自分自身の責任、自分が演奏したいものをそのまま皆さまにお届けする・・・というイメージですが、オーケストラと共演する時は、マエストロやオーケストラとのアンサンブルが非常に大切になりますよね。ですから、100%自分の演奏したいように演奏できるわけではありません。
それがマエストロ ヤルヴィの指揮だとオーケストラが、とてもフレキシブルなんです!私も即興とまではいきませんが、自由にその時に感じたものを演奏していると、それについてきてくれて、サポートしてくださるんです。さらにオーケストラの演奏が私にインスピレーションを与えてくれて、またまた新しい何かがステージの上で生まれる!ライブのステージでしか味わえない、エキサイティングな演奏ができるのです。ピアニストとして最高の時間を過ごすことができるんです!
Q:そういう信頼関係って大事ですよね。
ASO:そうですね。絶対的な安心感がありますから、私も私らしく演奏できます!それに、私はマエストロやオーケストラと一緒に音楽を作っていきたい!音楽という共通の言葉で伝えていきたい!と思っていますから、今回の共演は本当に楽しみです。
Q:パーヴォ・ヤルヴィ指揮フランクフルト放響との日本ツアーの後の予定を教えていただけますか?
ASO:ロシアのサンクトペテルブルグで行われる白夜祭でリサイタルを行い、それをライブ録音する予定です。(モーツァルト:デュポールのメヌエットによる変奏曲 KV.573/シューベルト:ピアノソナタ第17番 ニ長調 D.850/ムソルグスキー:展覧会の絵 )
秋にはそのプログラムで、日本ツアーも行います。
Q:前回の来日は、ちょうど1年前でしたね。
ASO:昨年はお正月(1月1日)に日本に来て、NHKニューイヤーコンサートで演奏させていただいたり、各地でリサイタルを行ったりしましたが、その後は来日するチャンスがありませんでした。東日本大震災が起き、ずっと日本のこと、日本の皆さんのことを心配し続けてきてきましたが、こうしてようやく日本に来ることができました。
Q:震災のことはどのように知ったのですか?
ASO:ウィーン交響楽団とのツアー中に、友人からのメールで知りました。いつもは賑やかなメンバーが、シーンとしていたことをよく覚えています。被害を受けた地域の中には、私もツアーなどで行ったことがあるところもあって、ショックを受けました。
すぐにヨーロッパで何か私にできることはないかと思い、いくつかのチャリティコンサートに出演したのですが、それだけでは満足できませんでした。できるだけ早く皆さんのところに行きたかったのです。ですから、今回仙台やその周りの地域でチャリティコンサートを行えて本当に良かったです。それから、もうひとつお話したいのですが、震災の時に皆さんが、非常に冷静に思いやりを持った行動をとられていたことに心から感動しました。私は今まで、ドイツ人と日本人のハーフ、ということで悩んだり、辛い思いをしたりしたことがありましたが、私の中に日本人の血が流れていることを心から誇りに思いました。
パーヴォ・ヤルヴィ指揮
フランクフルト放送交響楽団
2012年6月6日(水) 19時開演 サントリーホール
曲目:
リスト:ピアノ協奏曲 第1番 変ホ長調
(ピアノ:アリス=紗良・オット)
マーラー:交響曲第5番 嬰ハ短調
2012年6月7日(木)19時開演 サントリーホール
曲目:
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調
(ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン)
ブルックナー:交響曲第8番 ハ短調
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